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「篤」が「あつし」に変わるまで(11)

< 第1話 からお読みください >

主要登場人物・団体

●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。
●福島一郎・・・品川出版(株)の社長。実在する人物だが仮名。
●品川出版(株)・・・在京の出版社。実在する会社だが仮名。

Episode 11

- 噛み合わない会話 -

今でも曜日は覚えている。
木曜日だ。
30ページの中途半端な原稿を速達で送ったのが月曜日。
もちろん、翌日火曜日には品川出版に届いているはずだ。

せっかちな僕は、よほど火曜日の夕方に電話で結果を聞こうと思ったが、「さすがにまだ目を通していないだろう」と思って我慢した。

そして、翌日夕方に、はやる気持ちを押さえながら電話したのだが、女性アルバイトが福島社長の外出と翌日の在社を僕に告げてくれた。

そのときに、原稿が届いていることは、念の為にその女性アルバイトに確認を取ったが、まだ未開封であることを知らされたときにはさすがに大きな不安が頭をよぎり始めた。

「やはり、出版社の社長ともあろう人が、そうやすやすと原稿に目を通してはくれないのではないか」

そんな不安を拭い去ることができないまま、翌日僕は、意を決して再び受話器を取ったのだ。

「え、もうできちゃったの?」
「あ、本当だ。確かにこちらに届いてますね」
「んー、どうしようかな。これ、確かExcelのマクロだよね。となると、まずはあそこかなー」
「んー、Excelだよねー、これ・・・」

おっと。
また福島社長お得意のひとり言なのか質問なのかわからない、微妙な言い回しが始まったぞ。

しかし、今回は言っている意味がさっぱりわからない。
僕の原稿が「完成」したことを残念がっているようにも聞こえる。

いや、それよりも、「あそこ」って何だ?

ひょっとして印刷所かな?

え!

となると、内容も読まずに僕はテストに合格?

ちょ、ちょっとそれはまずい。

僕の原稿は「未完成」だ。

「売上入力」の半分も書いていない。

いや、待て、そもそも書いたのはたったの30ページ。

それを印刷所に持ち込んで本にしてしまうのか?

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