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「篤」が「あつし」に変わるまで(13)

< 第1話 からお読みください >

主要登場人物・団体

●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。
●福島一郎・・・品川出版(株)の社長。実在する人物だが仮名。
●品川出版(株)・・・在京の出版社。実在する会社だが仮名。

Episode 13

- ついに完成! -

僕は、どうしても素直には喜べなかった。

「いや、もうテストはパスしたと思ってください。本が完成すれば、それで合格!」

確かに、福島社長はそう言った。

テストに合格したのだ。
そう遠くない将来、僕の本が全国の書店に並ぶのだ。
本来なら、こんなに嬉しい話はない。

しかし、素人考えだが、原稿に一瞥もくれずに、しかも何の実績もないどこの馬の骨ともわからない「大村篤」という人間に、そう簡単に本を書かせていいものなのか。
もし自分が出版社の人間なら、そんなリスキーなことは絶対にしないであろう。

おかしな話だが、この頃の僕は、自分のことよりも福島社長の身を案じ始めていた。

しかし、何とも釈然としない気持ちの中でも、とりあえず執筆を進めるうちに、僕の中からそうした不安や懸念、また他人の身を案ずる「余裕」はしだいになくなっていく。

気が付いたら、来る日も来る日も12時間もの時間を執筆に費やしていた。

そして、ここが僕が楽天家たるゆえんだが、自分の原稿に酔いしれ、福島社長の言うとおり、当然その原稿が書籍として世に出ることを信じて疑わなくなっていった。

いや、ベストセラーになるとすら思っていた。

舞い込んでくるソフトの開発の依頼もすべて断り、とにかく執筆三昧。

今でもそのときの自分の集中力に驚かされるが、ものの2ヶ月で原稿を完成させてしまったのだ。

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